ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学（MIT）の医学者達は、市販されている有益菌（プロバイオティクス、善玉菌）であるLactobacillus reuteri ATCC 6475（ラクトバチルス・ロイテリ菌ATCC PTA 6475）をマウスに投与した結果、テストステロンの合成と精子の産生が促進されたこと、さらにはマウスをよりスリムにすることも確認した。

 

Lactobacillus reuteri ATCC 6475

  フィンランドの女性の母乳から分離されたL. reuteri ATCC 6475は、動物実験1により胃腸の炎症プロセスの阻害2、「ハンバーガーバクテリア」EHEC（腸管出血性大腸菌）3のような有害微生物の発育抑制、骨を強化することが示された。

 

脂肪減少

  2013年の夏、MITのTheofilos PoutahidisはPloS Oneにおいて動物実験による画期的な研究結果を発表した4。その研究でPoutahidisは、ジャンクフードを模倣したカロリーに富んだ食物でマウスを肥育させた。そしてLactobacillus reuteri ATCC 6475を与えたところ、マウスの体重が減少し、標準的な食物を与えられたマウスもLactobacillus reuteri ATCC 6475を与えたことで体重が減少した。

PoutahidisはL. reuteri ATCC 6475を与えることで免疫細胞による抗炎症性IL-10の産生が促進され、IL-6やIL-17などの炎症促進性シグナルタンパク質の合成が減少するため肥満の可能性が減ると延べている。

 

若返り

2014年1月、PoutahidisはPloS Oneに別の動物研究の結果を発表した4。 そして、これは2013年の発表よりさらにセンセーショナルだった  

以前の実験でPoutahidisは高齢のマウスに細菌を与えると若く見えるようになり、高齢であってもオスは性的に活発であったことに気付いた。また、コントロール群の同じ年齢のマウスよりも大きな精巣を有していた。

 

テストステロン

  Poutahidisの最近の研究では、オスのマウスのグループに数ヶ月間標準食を、別のグループには部分的にジャンクフードの食餌を、各群のラットの半分にL. reuteri ATCC 6475を与えた。

  下の図は、L. reuteri ATCC 6475を与えられたマウスが5ヶ月齢時に体内でより多くのテストステロンを循環させることを示している。これは、L. reuteri ATCC 6475が睾丸をより大きくしただけでなく、ライディッヒ細胞を産生するテストステロンを増加させたためでもあった。

reuteri ATCC 6475はまた、精子細胞の産生も促進し、それは老齢期に動物の精巣が萎縮するのを防いだ。

 研究者らはまた、動物における炎症性タンパク質IL-17を失活させることによって同じ効果を誘導することにも成功し、L. reuteri ATCC 6475がそのシグナルタンパク質の失活によってテストステロンレベルを上昇させると推測している。

 

結論

「進化論的な観点から、乳酸菌はテストステロンを利用して精神的、肉体的、生殖適性を最適化する哺乳動物と共進化した可能性がある」と研究者らは結論づけている。 「私たちの別の研究でコントロールと比較して血清テストステロン値が高いほど、痩せた体格ではなく、筋肉量が増加し、マウスの活動量が増加した（データは示されていない）。」

「プロバイオティクスは通常の老化による疾患を管理するための実用的な選択肢になる可能性がある」と研究者らは結論づけている。 そして「循環性テストステロン濃度の低下は、精子形成の減少、性欲の低下、体脂肪の増加、筋肉と骨量の減少、低エネルギーレベル、疲労、身体的能力の低下、気分の落ち込み、認知機能障害の障害を含む多くの有害作用に関係している。 Lactobacillus reuteriやその他のプロバイオティクスの摂取は、テストステロン補完療法の議論や副作用のリスクがなければ、男性性腺機能低下症の予防に対して自然なアプローチになるだろう」と語った。

 

1) J Cell Physiol. 2013 Aug;228(8):1793-8.

2) Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2010 Nov; 299（5）：G1087-96

3) Infect Immun. 2011 Jan; 79（1）：185-91

4) PLoS One. 2013 Jul 10; 8（7）：e68596

 

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